ガン免疫療法の効かない人と劇的に効果のある人の違いはなに?

ガン免疫療法の第一人者 Nicholas P. Restifo医師らの研究チームがガン免疫療法の効く人、効かない人を決定している遺伝子を同定しました。 http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature23477.html?foxtrotcallback=true

この遺伝子によりコードされているタンパク質、「アペリン受容体」はインターフェロンの働きに重要な分子と結合します。

インターフェロン（ガンマ）とは抗がん剤としても使われています。

ガン免疫療法が劇的に効く人と効かない人ではアペリン受容体の構造が変化しており細胞内での結合分子や親和性が変わっている可能性あり。

つまり免疫療法の効果を予測するには「アペリン受容体」の変異をサッとシークエンスして読めばどの程度効果があるのかがわかるようになるということです。

詳細は知りたい方は以下をお読みください。

実験では 123,000 個のタンパク質を一つづつつぶしていく（ノックダウン）手法を利用して「アペリン受容体」にたどり着きました。

Apelin Receptor　（アペリン受容体）とは？

アペリン受容体はヒトの第11番染色体上にコードされています。

細胞での膜貫通領域はアンギオテンシン受容体と相同性があり、別名、アンギオテンシンII様受容体とも呼ばれています。

アペリン受容体はアンギオテンシンII受容体同様に血圧調節などにも関与すると報告されています。

アペリンとは？

株式会社ペプチド研究所より情報入手。 https://www.peptide.co.jp/new-product/307.html

アペリンはアペリン受容体と結合することによりさまざまな作用を示すことが推定されます。

アペリンは、 77個のアミノ酸からなるタンパク質で主に内皮細胞から放出され，途中で13個のアミノ酸に切断され、最も活性の高いApelin-13となります。

またアペリンは血管では毛細血管の血管腔を拡大化し、血管透過性を制御します。

血管新生にも関与しています。以下　引用文献。 Saint-Geniez M, Masri B, Malecaze F, Knibiehler B, Audigier Y (January 2002). “Expression of the murine msr/apj receptor and its ligand apelin is upregulated during formation of the retinal vessels”. Mech. Dev. 110 (1–2): 183–6.

Masri B, Morin N, Cornu M, Knibiehler B, Audigier Y (December 2004). “Apelin (65-77) activates p70 S6 kinase and is mitogenic for umbilical endothelial cells”. FASEB J. 18 (15): 1909–11.

Kasai A, Shintani N, Oda M, Kakuda M, Hashimoto H, Matsuda T, Hinuma S, Baba A (December 2004). “Apelin is a novel angiogenic factor in retinal endothelial cells”. Biochem. Biophys. Res. Commun. 325 (2): 395–400.

一方、アペリン受容体の発現は血管だけに限らず中枢神経系、心臓や血液中の単核細胞に発現しています。

心臓では発達期からアペリン受容体が発現しており、心筋細胞への分化が報告されています。以下　引用文献

Scott IC, Masri B, D'Amico LA, Jin SW, Jungblut B, Wehman AM, Baier H, Audigier Y, Stainier DY (March 2007). “The g protein-coupled receptor agtrl1b regulates early development of myocardial progenitors”. Dev. Cell. 12 (3): 403–13.

Zeng XX, Wilm TP, Sepich DS, Solnica-Krezel L (March 2007). “Apelin and its receptor control heart field formation during zebrafish gastrulation”. Dev. Cell. 12 (3): 391–402.

アペリン受容体は脳内にも発現しています。特に摂食中枢に発現しており、実際にアペリンをネズミに与えると水の消費量が増える。

一方、食欲に関しては亢進するという報告と関係ないという報告があり、まだ議論の余地がある。

以下　引用文献 Lee DK, Cheng R, Nguyen T, Fan T, Kariyawasam AP, Liu Y, Osmond DH, George SR, O'Dowd BF (2000). “Characterization of apelin, the ligand for the APJ receptor”. J. Neurochem. 74 (1): 34–41.

O'Carroll AM, Selby TL, Palkovits M, Lolait SJ (June 2000). “Distribution of mRNA encoding B78/apj, the rat homologue of the human APJ receptor, and its endogenous ligand apelin in brain and peripheral tissues”. Biochim. Biophys. Acta. 1492 (1): 72–80.